【物語の背景】
主人公は東京都内在住の50代の大手建材メーカーの会社員。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。
今回は妻が引戸のバリアフリー記事をネットで発見。そのメリットを聞いて来た。
「あんた!ちょっと、これについて教えてくれない?」
……嫁さんはネットの記事を見せて来た。引戸の玄関リフォーム記事でバリアフリーについて扱った部分だ。また面倒な話を持って来たかぁ。
「引戸ね。またどうして?」
「実家から言って来たのよ。『引戸って良さそう』って。そして改めて見たらメリットが結構あるみたいじゃない。」
「確かに引戸はいいね。それ、教えてあげるよ。ちなみに、開き戸と引戸は間違いないようにな。」

引戸がバリアフリーにおすすめな理由
「まずは引戸がバリアフリーにおすすめな理由を説明しよう。ところで、バリアフリーについて確認しておきたい。引戸の場合のバリアフリーってどんな人が対象だと思う?」
「えーと、やっぱりお年寄りかな。」
「確かにそうだ。それじゃ、どんなお年寄りだと思う?」
「そうね。杖を使っている人かな。」
「それは半分当たり。もっと言うと、歩行補助具や車いすの方々も入るよね。」
「なるほど。確かにそんなお年寄りも多いわね。」
「そこまで分かればいいだろう。次に引戸の説明だ。ただ、この引戸のメリットは、開き戸でも解消されているものもある。けれど、昔の扉と比べてもあるから敢えて加えて説明するぞ。」
段差の解消
「これは引戸だけでなく、前後に開く開き戸に関しても言えることなんだけど、今のドアは段差が非常に小さくなっている。」
「段差があるとどうなの?」
「転倒のリスクが高くなるんだよ。あと、車いすの人なんかは大変だ。」
「けど、段差なんか少ないんじゃないの?」
「確かに、今の住宅のドアは段差が少なくなるように設計してある。しかし、昔の家は結構あったんだ。だから、玄関のリフォームが重要視されている。」
「なるほどね。」
軽い力で操作が可能
「それじゃ、次に引戸のメリットだ。今の引戸は軽い力で開くことが出来る。スーッと開く感じだな。」
「確かにそうね。」
「開閉する時の『軽さ』って、実はすごく大切なことなんだ。まずは、お年寄りは運動能力が落ちていて、腕力が弱くなっているからな。」
「そうねだわ。お年寄りの動きを見ていると分かるわ。」
「ましてや車いすを使っている人なんかは座ったままでの開閉になる。扉が重ければ大変だ。」
「なるほど、車いすかぁ。」
前後方向に移動せずに開閉できる
「次に挙げられるのが『前後に移動せずに開閉が可能な点』だな。」
「前後に移動っていうのはなに」
「例えば、開き戸の場合は前後に動くから、前後への体重移動が必要だ。人によっては軽く1歩下がらなければいけない。」
「確かにそうだね。」
「けど、意外にその『軽い1歩』が重要なんだ。それであっても転倒リスクが生じる。」
「へえー。」
「そして、車いすや歩行補助具を使っている人なんかは開閉が大変だ。車いすなんかは前後の操作を片手でしながらもう片手でドアの開閉をしなければいけない。この点で引戸は有利なのさ。」
「そういうことなのね。」
ゆっくりと閉まる
「ところで、半自動ってのは知っているか?」
「開く時は手で開けて、閉める時は自動で閉まるヤツだね。」
「当たりだ。ところでその半自動扉のスピードってゆっくりだろ?」
「うん。」
「その半自動のゆっくりと閉まるのはバリアフリーを考えるとメリットだ。」
「と言うのは?」
「全部が手動の引戸は『閉める動作』も必要だ。その場合は方向転換も必要かも知れない。」
「なるほど、方向転換か。」
「しかし、半自動の引戸であればその方向転換も必要ないだろうな。」
「まぁ、確かに。」
「そして、『ゆっくり』というのは安全対策の点でものすごく大切なんだ。」
「どういうこと?」
「戸に挟まれた時の安全性が違うんだ。仮に扉が速いのならば、場合によってはケガもし得るからね。」
「なるほど、安全なのね。」
風にあおられない
「開き戸の場合は風にあおられることがある。強風が吹いて来るとドアがバタンと閉まる。これは結構危険だ。」
「挟まれるもんね。」
「そうなんだ。しかし、引戸は左右に開閉するからバタンと閉まることはない。これは安全だ。」
「確かにそうね。」
【ここでのポイント】
引戸がバリアフリーにおすすめな理由
●段差の解消
●軽い力で操作が可能
●前後方向に移動せずに開閉できる
●ゆっくりと閉まる
●風にあおられない
引戸設置の注意点・確認事項
「ところで、引戸を設置する上では確認事項がある。設置の時には注意が必要だ。」
「どんなことかな?」
扉を引き込むスペースがあるか
「最初にチェックが必要なのは『引戸を引き込むスペースがあるかどうか』だな。引戸は扉をスライドさせて開閉する都合上、引き込むスペースが必要だ。」
「なるほど。引き込むスペースね。確かに必要だわ。」
手動か自動か
「次に、手動か自動かもチェックが必要。腕力の衰えた人なんかは自動が望ましい場合も少なくないからね。」
「確かにそうだわね。歩行補助具なんかを持っている人なんかも必要かも知れない。」
どのような機能が必要か
「また、今の引戸には多くの機能が付いている。例えば錠の部分だな。スマートキーなんかのタイプもあるから、バリアフリーの観点からは検討が必要だ。」
「確かにね。」
デザインについて
「あと、デザインだろうな。これは全般的に言えることなんだろうが、せっかく扉を付けるならば、おしゃれな扉の方が良いだろう。家屋とのコーディネートなんかも考えた方がいいだろうな。」
「そうだわね。おしゃれは重要よ。」
……そんな感じで引戸のレクチャーは終了。
めでたしめでたし。
【ここでのポイント】
引戸設置の注意点
●扉を引き込むスペースがあるか
●手動か自動か
●どのような機能が必要か
●デザイン性
後日談
「この間の引戸だけど、実家では取り付けたのかい?」
「結局やめたみたい。」
「どうして?メリット多かったのに。」
「ゆっくり閉まるのが気に入らなかったらしくて。」
「どういうこと?」
「ゆっくり閉まるから、締まる前に虫が入って来そうってことに気が付いたのよ。」
「……そこか。」
……確かに実家は自然豊かな土地だ。けど、その豊かな自然が仇となることも多いのか。意外なデメリットに唖然とするだけだった。
おそまつ。
教訓:引戸について
ここまで引戸について挙げてきました。各パラグラフについてまとめて行きたいと思います。
1)引戸のがバリアフリーにおすすめな理由
●段差の解消
●軽い力で操作が可能
●前後方向に移動せずに開閉できる
●ゆっくりと閉まる
2)引戸設置の注意点・確認事項
●扉を引き込むスペースがあるか
●手動か自動か
●どのような機能が必要か
●デザイン性
引戸はバリアフリーの点で優れます。今後の高齢化社会に備えるならば、非常に有効なアイテムになると言えそうです。
引戸についての追加情報
昔の扉は築年数が経つと建付けが悪くなったものでした。確かに大工さんの腕は素晴らしく、あれほどまでに作り込んだのは日本人の技術と言えることでしょう。
しかし、「開閉回数は何回くらい?」と訪ねられたら、大工さんも困ったのではないでしょうか?
ところで、今のドアは開閉回数の試験も行っております。
それはJIS A 1530 「建具の開閉繰返し試験方法」というもの。自働で開閉できる試験装置にセットして、機械で開閉するわけです。ドアのカタログを見ると「10万回」などとの表記を見ることができますが、その回数はこのようにカウントされているわけなのです。
ちなみに、下の挿絵は引戸の開閉繰り返し試験のイメージ図。開閉を繰り返す上で、各部の破損の有無や変形、操作力の変化などをチェックします。

参考資料
出典
JIS A 1530 「建具の開閉繰返し試験方法」
https://kikakurui.com/a1/A1530-2014-01.html
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