【物語の背景】
主人公は東京都内の50代の建材メーカー勤務のサラリーマン。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。 ちなみに会社じゃパッとしない管理職。部下にも手を焼いている模様。
「あんた、この価格差ってどう思う?」
・・・なんだ?嫁さんが資料を渡してきたぞ。・・・と思ったらリフォームの見積もり書か。外壁塗装だな。へぇー、いくつもの見積もりがあるけど、値段も仕様もバラバラ。整理しなければワケが分からなくなるぞ。
「外壁塗装の見積もりね。けど、仕様もバラバラだから単純に比較は出来ないよ。」
「んじゃ、どのように見積もりを取ればいいのよ?」
「まずは同じグレードの塗装を選んでの比較かな。そうすれば業者間の差が分かる。」
「けど、いつも思ってたんだけど、塗装のグレードってそんなに大切なの?ある程度の耐用年数があれば同じようにも思えるんだけど。」
「そりゃあ違うさ。だって下のグレードのヤツは10年も持たないけど、上のグレードならば20年レベルのものもある。完全に違うさ。」
「んじゃ、その塗料のグレードと耐用年数ってどう関係があるのよ?」
「なるほど、塗料のグレードと耐用年数の関係と違いね?それならば説明できる。」
「教えてよ。」
「化学が出て来るけど、覚悟しとけよ。」
外壁塗装の種類と耐用年数
「まずは外壁塗装についての復習だ。外壁塗装を理解する上では避けて通れない道だから、しっかり思い出すようにな。」
塗料について再確認
「まずは塗料だ。塗料はどんな素材から成り立っているか分かるか?」
「そんなの知らないわよ。」
「んじゃ教えてやるよ。塗料は次の3つが主な構成素材だ。」
●溶剤
●顔料
●樹脂
「イメージ的には溶剤の中に顔料と樹脂が溶けて混ぜ合わされてる、感じだと思う。まぁ、実際は塗りやすくするための素材とか、長期間の保存に耐えるための素材なんかもあるだろうが、そこを無視すれば、以上の3つが構成要素だ。」
「溶剤は分かるけど、樹脂って石油化学から出来たものっぽいわね。」
「いいところに気がついたな。そうだな、石油化学製品だ。」
「石油化学製品だとどうなるのよ?」
「化学の面で分かりやすくなるのさ。」
「さっぱり分からないわ。」
「まぁ、次の話だ。外壁塗装に使う塗料と耐用年数の説明だ。」
外壁塗装に使う塗料と耐用年数
「もしかしたら過去に話したかも知らないが、外壁塗装に使う塗料をピックアップすると、これくらいになるだろう。シリコン系はスタンダードとして、ウレタンは低スペックとして、フッ素は高級グレードの代表格として出した。」
「なるほどね。」
「そして、それぞれの塗料の耐用年数は概ねこんな感じだろう。ちなみに、最近はラジカル系と呼ばれる高性能の塗料が出ているが、便宜上、それは外しておく。」
●ウレタン塗装:7・10年
●シリコン塗装:10・12年
●フッ素系塗装:15・20年
「確かにそんな感じだったわね。けど、ここで見積もりの取り方のミスが分かったわ。グレードを合わせて依頼してみる。」
「まぁ、待ちなさい。ここまで話が来たついでだ。もう少し塗料について話すぞ。」
「分かったわよ。けど、少しだけよ。」
外壁塗装の耐用年数は何で決まるか?
「んじゃ、さっき挙げた塗料をミクロの世界まで見てみよう。化学の時間だ。高校の理科を思い出すようにな。」
「化学は苦手だったんだけどなぁ。」
塗料をミクロの世界を見てみると
「さて、塗料をミクロまで見てみよう。そうすると、石油化学製品のミクロまで見えて来る。」
「そうなのか」
「そうさ。ところで、石油を構成しているのは主に『炭化水素』って物質。炭素がチェーンのように繋がる。そして、そのチェーンの長さによって性質が違って来る。」
「性質って?」
「例えば、チェーンの長さが極端に短いと液体じゃなくてガス状になる。まぁ、天然ガスだな。エタンとかメタンとか言うヤツだ。」
「天然ガスかぁ。」
「んで、そこには別の物質も当然入ってる。そうなると、そのチェーンも状態が違うのさ。そうだな、この『チェーン』をイメージすることが重要だろな。」

分子の結合力の差
「ところで、さっきの塗料をミクロのレベルまで見ると、それぞれのチェーンに特徴があるのが分かる。例えば、低いグレードのウレタン系だと、炭素が基本的なチェーンで、あとは窒素やらの別のものが繋がっている。いずれにせよ、チェーンの結合力は弱い。」
「なるほど、弱いのね。」
「その一方で、シリコン系はその中にケイ素が入る。そうすると、チェーンの強度が上がる。切れにくくなるのさ。」
「シリコンは更に切れにくいのね。」
「そしてフッ素だ。これがチェーンに入ると、更に切れにくくなる。強固になるんだな。」
「そこは想像がついた。」
「そして、この『チェーンの強さ』は塗装の強さに繋がる。だって、簡単に切れるウレタンよりも、シリコン、そしてフッ素と強くなって行くだろ。それに伴って耐用年数も長くなる。塗料のグレードも上がるのさ。」
「なるほどね。」
架橋の違い
「次に『架橋』ってものを覚えて欲しい。架橋はチェーン状になった塗料の分子と分子をくっつけるようなものだ。」
「それがなんで必要なの?」
「架橋されると糸状、つまりチェーン状の分子を横から横に繋ぐ。そうすると、塗料のチェーンが3次元的に繋がる。塗料が強くなるんだ。」
「なるほどね。」
「そして、この架橋の強さも塗料のグレードによっても違う。低グレードは弱く、高いグレードは強い。つまり、ここでも耐用年数が違って来るのさ。」

耐紫外線性の違い
「次に紫外線の問題。紫外線は太陽光に含まれるんだけど、樹脂なんかの分子の繋ぎ目を攻撃する効果を持つんだ。つまり、チェーンをバラバラにしようとするんだよな。」
「なるほど、それが樹脂の劣化になるのね。」
「いいところ行ってるね。ところで、塗料には他の物質が添加されているが、その中には紫外線に対する抵抗性を持つものがある。それが違ったらどうなる?」
「紫外線に対する強さが違って来る。」
「そう。それが耐久性にも繋がるのさ。」
顔料について
「ところで、先に『顔料』って言ったとも思う。覚えてるか?」
「大丈夫よ。覚えてるわ。」
「オッケーだ。んじゃ、顔料の役目って何かな?」
「えーっと・・・」
「早い話が塗料の色を決める素材だな。黒い顔料で塗料は黒くなる。白い顔料で塗料は白くなるイメージだ。」
「なるほどね。」
「そして、この顔料だって劣化する可能性は払拭出来ない。つまり、退色の可能性が出て来るのさ。」
「なるほどね。」
環境条件と耐用年数
「塗料の耐用年数についてザックリだけど説明した。アウトラインはイメージ出来たと思う。分からない点はあるか?」
「気になったことがあったわ。」
「どんなこと?」
「樹脂の点でも架橋の点でも、最終的には分子の関係性でしょ?そして紫外線。それって環境によって変わるから、耐用年数はケースバイケースになるんじゃないの?」
「いいところに気がついたね。そう。外壁塗装は環境によって違うケースはある。例えば、家屋の北側と南側、日射の条件が違うから、南側だけが劣化が激しい、なんてことがあるのさ。」
「なるほどね。」
後日談:塗料について話した後でのエピソード
さて、嫁さんはリフォーム屋の見積もり書と格闘している。なんせ数百万円になる工事だ。緊張もするだろう。
「見つけた。ここ最高!」
どこだろ?
「あんた、すごいのよ。電話一本で半額に負けるってとこ。安く上がって嬉しいわぁ。」
おいおい、悪質な業者の可能性あるぞ。
「工事って大丈夫か?見積もりを見せて見ろ。」
・・・見積もりを見て驚いた。コーキングの工事が手抜きじゃないか、とも思える内容だった。本来ならば撤去して交換のところも、上から打つだけにしてる。これ、ヤバい。
「あのさ、この会社ヤバいぞ。塗装はともかくとしても、コーキング工事がおそまつだ。」
「んじゃ、なんであん時に教えてくれなかったのよ!」
・・・出た、嫁さんの逆恨み的ヒステリー。これが出ると手に負えないんだよな。
「ともかくあんた!どうなるか覚えてらっしゃい!」
そして次の日
・・・・・・弁当の上に紅生姜で「ドジ!」って書いてあった。同僚に見られて笑われたのは言うまでもない。とほほ。
塗料についての追加情報
現代の住宅はテクノロジーの結晶と言っても過言ではない産物です。何気ない部品に宇宙開発技術の応用があった……などと言うことも、もしかしたらあるかも知れません。
さて、今回取り上げた塗料の話、極めて化学的になりましたが、いかがでしたでしょうか。単なる塗料としか見えなかったものが、実は化学の結晶だったことに驚いた人も居るかも知れませんね。
このように、住宅をめぐるネタは多くあります。よかったら探してみてください。きっと家が面白くなるはずです。
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本記事では外壁塗装の強さに関して述べましたが、こちらの記事では外壁塗装の劣化の条件を、住宅の方向から切り込んでいます。よろしかったら、ご覧ください。
これはビックリ!外壁塗装の晒される条件って家の方向によってホントに違うの?

