【物語の背景】
主人公は東京都内の50代の建材メーカー勤務のサラリーマン。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。ここで紹介するのはある寒い朝でのエピソード。外では雪が降っています。
「あんた、今日はすごく寒いと思ったら、雪が降っているわよ。」
「ほう、そりゃ珍しい。今の東京じゃ滅多に降らないのに。」
「まぁ、確かにそうだわね。けど、東京は雪に弱いから困るわね。電車なんか簡単に止まるわ。」
「それも仕方ないだろ。けど、こんな雪の降る日になると気になることがあってなぁ。少し心配なことがある。」
「何よそれ?」
「家の外壁さ。サイディングが冬の寒さを耐えられるかって心配になるんだ。」
「へ????……サイディングって寒さにも弱いの?」
「そうだな。『凍害』って現象が起こり得るんだ。」
「トーガイ?」
「そ、凍害。凍り付くことで発生する現象さ。」
「ちょっと、それ教えてよ。」
「分かった。」
外壁材で起こる凍害とは?
「んじゃ、まずは凍害について説明しよう。凍害はコンクリートなんかで見られる現象だ。素材が水を含んで、その水の凍結と融解を繰り返すことによって発生する。」
「素材が水を吸って、その水が凍ったり溶けたりして起こる現象ってこと?」
「その通りだ。」
「けど、凍っちゃうのは分かるけど、それがどうして悪いの?」
「いい質問だ。それじゃ、窯業系サイディングの場合を挙げてみよう。」
窯業系サイディングの凍害って?
「まずは窯業系サイディングのJIS規格を見てみよう。『JIS A 5422 窯業系サイディング』ってやつ。」
「また難しい資料ね。」
「そこはカンベンしてくれ。まぁ、それはともかくとして、サイディングの性能に『含水率』って項目がある。これってなんの数字か分かるか?」
「含水ってことは、水をどれくらい含むかってこと?」
「その通り。改めて言うが、窯業系サイディングって水を含むんだ。しかも、含水率は試験まで規定されている。よほど重要なんだろうな。」
「なるほどね」
「んで、水を含んで凍ったとする。そうすると水の体積は増えるだろ。」
「確かに体積が増えるわね。」
「水が含んだところが凍って体積が増えると、氷になった周囲の部分が破壊されてしまうんだ。それで、ひび割れたり、剥がれ落ちたりする。」
「なるほどね。」
「まぁ、これが凍害のイメージだ。多分、分かりやすい。」
自分は嫁さんにタブレット端末を見せた。凍害のイメージが分かるはずだ。

サイディングの他は大丈夫?
「ちなみに、凍害ってサイディングだけなの?他にもありそうだけど。」
「コンクリート素材ならば発生するだろうな。街中じゃコンクリートを使っているところは山ほどあるだろ。大なり小なり凍害のリスクはあるんじゃないかな。」
「たしかにね。外壁がコンクリートの家もあるみたいだしね。」
「それを考えると深刻だなぁ……。」
凍害で強度は落ちるの?
「少し気になるんだけどさ、凍害ってサイディングの強度にまで影響し得るのかしら?」
「良いところに気が付いた。『可能性がある』って程度の回答が最適解だと思うよ。基本的にはサイディングは表面を塗装して水を含まないように作っているからだ。そして、塗装が劣化した場合は再塗装ってことになる。タテマエ上は水を含まない。だから凍害は起こらないんだ。
……けど、実際は再塗装されない場合があるから水は侵入し得るだろう。そうすると凍害が起こって、深刻になると強度の低下もあり得るかもね。」
「まぁ、それは確かに。」
「ただ、これは恐らく最悪の状態だ。それまでに塗り替える場合がほとんどだと思うよ。」
凍害の対策はあるのか?
「んじゃ、凍害の対策ってどんなのがあるのかな?」
「まぁ、ポイントとなるのは『水』だろうな。」
凍害を防ぐ手段とは
「先にも言ったように、凍害は水が大きな原因だ。だから、水が入らないようにすれば良い。外壁の再塗装が一番効果はあるだろう。」
「なるほど、ここでも再塗装がポイントになるのね。」
「そうだね。ウチの場合は現時点で築20年も経っているから、ホントは凍害対策としても外壁の再塗装をしなければいけないな。放置は確かに行けない。」
「そうなると予算の問題か。……困るわね。」
「そう、困る。」
……溜息と共に、自分と嫁さんは肩を落としてしまった。
凍害の起こりやすい部分とは
「ちなみに、凍害の起こりやすい部分ってあるのかな?」
「それはあるさ。家の外壁を見ても、水の掛かりやすい部分なんていっぱいある。」
「例えば?」
「換気扇の周囲とか。風呂場の換気扇なんかは高い湿度の空気を排気する。その高湿度の空気は冷たい外気に触れると水になるだろ。それがサイディングに掛かってしまい、凍害の原因となり得る。」
「なるほどね」
「あとは窓サッシの周囲とか。結露した水が流れ込んでしまって溜まり、それが原因で凍害が起こり得る。」
「困るわね。そんなに弱い部分が多いと。」
凍害が起こってしまったらどうするか?
「んじゃ、仮に凍害が起こってしまった場合はどうすれば良いのかしら?」
「一旦凍害が起こってしまってボロボロになったサイディングは元には戻らない。発生した凍害の状況にもよるが、小さい部分であればシーリングをして塗装とか。著しい場合には張り替えるとかかもね。」
「張り替えるのは難しいわね。」
「そうなんだ。サイディングは同じデザインを手配することが非常に難しい。だから、似たデザインのものを張り替えることになる場合が少なくないってことだ。あとは上から塗装をして目立たないようにするとか、だろうね。」
「いずれにしても予防が一番みたい。となると、外壁の塗装かなぁ。」
「そうなるだろうな。」
補修の費用は?
「ちなみにだけど、凍害が発生した場合は非常に厄介。補修をしなければいけない。問題なのは費用だろうね。」
「どれくらい掛かるの?」
「部分的な細かい箇所であれば5万円程度で済む場合もあるけど、サイディングの交換になると、2~300,000円くらいは軽く行くだろうね。サイディング全体の張替えになると、300万円超えも珍しくないかも。」
「凄すぎる……」
「まぁ、被害の状況や補修する面積なんかにもよるだろうけど、やっぱり予防に徹するべきだろうね。」
予防の重要性
「こんな感じで、凍害は厄介な現象だ。外壁材がダメになってしまうと、壁の内部までダメージを受ける。場合によってはサイディングの裏側の部材まで水が侵入しやすくなるだろう。水が侵入すると部材も腐ってしまう可能性も出るから、実に厄介だ。」
「となると、どうするのが賢い選択なのかしら?」
「やっぱり『予防』じゃないかな。外壁材がダメになる前のメンテナンスが不可欠だ。かと言って、素人では劣化の具合を判断するのは難しい。プロに見てもらうのがいいかも。」
「具体的にはどうするの?」
「住宅会社のアフターフォロー体制なんかを確認して、診断してもらうのが良いかも。住宅会社にしてもリフォーム会社にしても、メンテナンス体制を敷いているところが少なくない。例えば『10年診断』みたいなの。それを活用すれば外壁の受けたダメージも分かりやすいと思うぞ。」
「なるほど。メンテナンスかぁ。」
凍害の起こりやすい地域とは
「ちなみに、凍害が起こりやすい地域は次の通りだね。
- 北海道
- 東北地方
- 北陸地方
- 長野県
全般的に気温が0℃前後を上下する日が非常に多い地域になる。『凍ったまま』と言うよりも、『凍ったり溶けたり』を繰り返す地域、って感じ。
また、雪が多い場所は外壁材が雪に埋もれる場合もある。その状態が長時間続くならば、リスクが高くなるだろうな。」
「東京でも起こるのかしら。」
「氷点下まで気温が下がることが結構珍しいから、リスクはそれほどではないかも知れない。例えば、換気扇のまわりとか、サッシ周囲のような、さっきも言った部分かな。」
「確かに厄介だわ。」
後日談:凍害を説明した後のエピソード
さて、月末だ。今月も少ない小遣いでなんとか乗り切れた。次の月の小遣いを出してくれるように嫁さんに言わなきゃな。
そんなこんなを考えていた時、嫁さんからメールが来ているのに気が付いた。
「住宅の外壁塗装の資金作りの一環として、今月からしばらく小遣いを減らさせていただきます。築20年の我が家の存続のため、どうぞご了承ください。」
……なんだと?小遣い減額だと?……とほほ、参った。
サイディングについての追加情報
サイディングの施工はプロの技術が必要ですが、全部をプロに丸投げすることは良くありません。住宅の持ち主としても、ある程度は勉強をしておくべきです。
では、どのような勉強をするべきでしょうか。
オススメなのはこの資料。サイディングの業者向けではあるのですが、比較的やさしく書いています。施工の資料とはなりますが、サイディングの特徴を知るのに適しているはずです。
一般社団法人 日本窯業外装材協会
窯業系サイディングと標準施工
https://www.nyg.gr.jp/gizyutusiryou/pdf/hyojyun/hyojyun_sekou.pdf
【おすすめの記事】
●本記事ではサイディングの凍害について取り上げました。こちらでは外壁材の晒される環境について述べています。外壁材について理解が深まると思います。どうぞご覧ください。
これはビックリ!外壁塗装の晒される条件って家の方向によってホントに違うの?
●こちらの記事ではサイディングのカバー工法について記載しています。サイディングの施工について理解が深まります。どうぞ、ご覧ください。
果たして本当に万能?サイディングのカバー工法リフォーム

