【物語の背景】
主人公は東京都内の50代の建材メーカー勤務のサラリーマン。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。
「最近になって大きな地震が多いわね。」
「そうだな。油断しているとグラッと来る。慌てて地震速報を見てしまう。」
「それでなんだけど、この家も20年は経ってるわ。大丈夫なのかしら?」
「それじゃ、この家を診断してみようか。」
「診断ってどうするの?」
「ホームインスペクションってのがある。それを使おう。」
「けど、依頼する前に教えてよ。」
「分かった。」
建築物に大きな力が加わるとどうなるか
「ホームインスペクションの話の前に、建物に大きな力が加わるとどうなるかを説明しよう。」
強度が落ちる
「まずは強度だ。建物に大きな力が加わると、その力は建物の各部材に分散される。地震の横揺れならば柱や筋交いなんかに来るだろう。そして、接合部分にも加わる。筋交いの接合部分などは特に大きな力が加わるんじゃないかな。」
「確かにそうかもね。」
「他にも春一番や台風なんか。風は屋根を吹き上げる方向に力が加わる場合があるから、屋根の部材や接合部分がダメージを食うだろう。」
「そうね。けど、その力を耐えているでしょ?強度に影響は無いんじゃないの?」
「いや、強い力が加わると、部材や部品にひずみが走る。そして、それが大きくなるとヒビが入り、本格的な破壊に繋がるんだ。」
「それは怖いわね。」
耐用年数が短くなる
「そんな状態だと耐用年数も短くなるね。
例えば、外壁にヒビが走っていたら、それは雨水の侵入が考えられる。雨水が壁に入ってしまうと、場合によっては部材を腐食させたりする。」
「それも困るわ」
「例えば、壁の中で部材を固定しているボルトや釘がサビてボロボロになったらどうなる?危険だろ?」
「ええ、そうだわね。」
「ついでに言うと、シロアリなんかは水に濡れて腐った木を好む。当然ながら、シロアリに食われた家は危険だ。」
倒壊・崩壊のリスク
「そのように考えるならば、その行きつく先は家屋の倒壊や崩壊だ。
部材がシロアリに食われたならば、家の強度はガタ落ちになる。耐震性も耐風圧性も落ちてしまうから、危険だよな。」
「なるほど、恐いわねぇ。」
「ちなみに家が潰れたら住んでいる我々はただじゃ済まんぞ。下手すりゃ家がそのまま墓場にもなるからな。」
【ここでのポイント】
建築物に大きな力加わると
・強度が落ちる
・耐用年数が短くなる
・倒壊・崩壊のリスク
ホームインスペクションって何?
「ホームインスペクションはそんな時に便利だ。住宅のプロが診断してくれる。例えば、地震や台風のような大きな力が加わると、柱や筋交いにその力が伝わり、部材がダメージを受ける。あるものはヒビが入るかも知れないし、折れもするかも知れない。部品が外れることもあるだろう。」
「そうだわね。」
「しかも、そのような場所は通常では見えない。不動産を買う時なんか、内覧をするだろうが部材単位でのチェックなどはしないだろう。だから、外装と内装はピカピカで構造部分はボロボロなんて言ったらシャレにならんだろ。」
「まぁ、そうだわね。」
「その点、ホームインスペクションでは外装や内装だけでなく、床下にも潜り込んで構造部材なんかもチェックする。だから確認の精度が非常に高い。」
「なるほどね。」
第三者の立場にある住宅のチェック
「ちなみに、ホームインスペクションは第三者の立場にいる。実は、この「第三者の立場」ってのが意外に重要だ。」
「それはなんで?」
「例えば、不動産会社と提携していたら、不動産会社に有利な診断をするかも知れないだろ?それは危険だ。
「確かに危険だわ。第三者でなければいけないのね。」
住宅の専門家が職務に就く
「ところで、ホームインスペクションの検査精度はインスペクターの技量によっても変わるよね。測定精度は人によって意外と違うし、その人の性格によっても違うかも知れない。」
「確かにそうだわね。」
「その点、ホームインスペクションは住宅のプロが測定に当たる。細かい部分まで知っているから、測定精度が非常に高い。」
「それは心強いわね。」
【ここでのポイント】
・ホームインスペクションとは第三者の立場にある住宅のチェック
・住宅の専門家が職務に就く
ホームインスペクションが必要な場面
「んじゃ、ホームインスペクションの需要が高まるのはどのような場面だと思う?」
「んー、さっき話が出た地震なんかの後と、そうだわね、中古住宅を買う時なんかかしら。」
「ご名答。とりあえず、その2つの例から説明するよ。」
地震をはじめとする自然災害の後
「さて、日本は自然災害の多い国だ。第一に言えるのが地震。これで崩れる家は少なくない。しかし、仮に崩れずに済んだとしても、何等かのダメージを受けているかも知れない。例えば、壁にヒビが入っていたら、そんなことが考えられるか……もしかしたら、内部の部材に異常が発生しているかも知れないよな。」
「そうだわね。近所の家が潰れたら、自分の家だって疑っちゃうもんね。」
「そうなんだ。だから、そういう時こそホームインスペクションの出番なんだ。自然災害でダメージを受けた家はチェックが必要。だからホームインスペクションを使うのさ。」
中古住宅の購入の際
「中古住宅を購入する時なんかも頼もしいよ。中古住宅はノーメンテナンスで放置されているケースが少なくない。そして、その間にどんな環境に置かれているかが分からない。例えば、シロアリに食われているかも知れないし、見えない部分で雨漏りをしているかも知れないだろ?」
「そうだわね」
「ホームインスペクションはそのような時にも使える。家の床下や天井裏に潜って、細かい部分までチェックしてくれるから安心なんだ。」
【ここでのポイント】
ホームインスペクションが必要な場面
・地震をはじめとする自然災害の後
・中古住宅の購入の後
インスペクターはどのように確認をするか
「それでは、インスペクターはどのように確認するかを説明しよう。」
ホームインスペクションでの確認項目
「まずは確認項目だ。大体の検査項目はこれくらい。床下や天井ばかりを話したが、電気やガス設備なんかもチェックしてくれる。電気にしたってガスにしたって、扱いを間違えりゃ火事や爆発の元だ。素人判断では危険過ぎるからね。」
「いっぱい項目があるのね。」
「だろ?」
●構造や耐久性に関わる部分
●基礎
●木部
●床の傾斜
●外壁
●屋根
●壁や天井
●ドアなどの建具
●床下
●給排水設備
●電気設備
●換気設備
●ガス設備
●雨水に関係する部分
●家の周囲
どのように確認するか
「確認方法もシビアだ。例えば、床の傾きなんかはレーザー水準器なんかを使うし、赤外線カメラなんかを使うこともある。木材やコンクリートの劣化判定なんかもやってくれるぞ。」
「レベルがものすごく高いのね。」
「そうさ。ある意味、人の命を守っているとも言えるからね。」
「分かったわ。今度、我が家でもホームインスペクションを頼んでみるわ。築20年も経つんだもん。診断は必要だわよね。」
「それじゃ、頼むね。」
【ここでのポイント】
ホームインスペクションのチェック項目は多岐に渡り、それぞれの項目についてシビアに確認する。
ホームインスペクションの後で
さて、我が家のホームインスペクションも終わり、嫁さんがインスペクターから話を聞いている。
「以上が建物の概要です。ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。」
ふむふむ、無事に終わったようだ。めでたしめでたし。
「ちなみに奥様、こんなものが床下にありましたが……」
「あら、何かしら?……1万円札の入った財布?……誰のかしら?」
ゲゲッ、あれはへそくりを入れてた財布。床下に隠しておいたんだった。
「ま、いいわ。臨時収入ね。ラッキー」
……あれ、自分のへそくりだぞ……ラッキーじゃねよ。とほほ。
教訓:ホームインスペクションについて
ここまでホームインスペクションについて取り上げて解説した。もしかして聞きなれないかも知れなかったが、イメージが掴めたことと思う。
さて、ここで前に挙げたポイントをまとめてみよう。
1)建築物に大きな力加わると
●強度が落ちる
●耐用年数が短くなる
●倒壊・崩壊のリスク
2)ホームインスペクションとは
●ホームインスペクションとは第三者の立場にある住宅のチェック
●住宅の専門家が職務に就く
3)ホームインスペクションが必要な場面
●地震をはじめとする自然災害の後
●中古住宅の購入の後
4)ホームインスペクションのチェック項目は多岐に渡り、それぞれの項目についてシビアに確認する。
住宅は非常に高額な買い物。それだけに大切に使用することが必要となるだろう。そのためにも診断は必要だ。建築物は素人で判断できるほど簡単ではない。疑問を感じたらホームインスペクションも考えて欲しいと思う。
ホームインスペクションの追加情報
ホームインスペクションについて取り上げました。住宅のプロによる診断の重要性が把握できたのではないでしょうか。
また、そのチェック項目の多さに驚いた人もいるかも知れませんね。
ところで、インスペクションには「日本ホームインスペクター協会」という団体があり、倫理行動規定を定めています。そこには「中立性の堅持」が謳われています。
住宅は一生に一度とも言われる買い物です。その買い物が適正であることを保証する規定とも言えそうですね。
参考資料
出典
NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会
規定・定款
https://www.jshi.org/about/regulation/

