【物語の背景】
主人公は東京都内の50代の建材メーカー勤務のサラリーマン。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。
ここで扱うのはアルミサッシ二重窓。主人公の義母が窓のリフォームを考える。その顛末はいかに?
さて、今日から盆休みだ。やっと休める……と思っていたのだが、今年は疲れる予定が入っている。嫁さんの実家に行かねばならん。
と言うのも、子供たちが嫁さんに「田舎に行きたい」って言い始め、嫁さんも承諾。自分は留守番をしながら野球中継でも観ようか……とのんびりした骨休めを夢見ていたのだが、「あんた!車の運転して!」との勅令が出た。哀れ、その夢はアッサリと破れてしまったわけだ。
いやいや、嫁さんの実家は宮城県。車だと相当にかかる。しかも盆休みの期間だ。牛歩戦術さながらの渋滞になるだろう。……とほほ。
50年前の実家
さて、そんなこんなで嫁さんの実家に到着。いやいや、大変だと思ったけど、夏場の東北は結構いいね。東京のように暑くない。しかも、近所から聞こえるセミの鳴き声はなかなかに風流にも思う。
そんなことを考えている内にお義母さんが出て来た。
「こんにちは。お世話になります。」
「おお、いいところに来てくれた。実は困ったことがあったんだよ。」
……なんだと?困ったこと?
猛烈に悪い予感がする。
「どうしたんですか?」
「いや、家の側に街灯が立ったんじゃ。立った時は明るくて良かったと思った。けど、夏になって厄介なことが起こったんじゃよ」
「なんですか?厄介なことって」
「セミじゃよ。」
「……セミ???」
お義母さんの話を聞いてみると、街灯にセミが止まるようになったってこと。セミは街灯が明るいもんだから昼だと思い込むのか、一晩中鳴いているらしい。ミーンミーンが夜中にまで聞こえるんだから、たまったもんじゃない……ってことだった。
「なにを馬鹿な……」と聞いた時は思ったが、その日の晩に真相が分かった。なるほど、確かに夜通しセミが鳴いている。これは適わん。
「お義母さん、何とかしましょう。」……少々面倒臭かったけど、こりゃ可哀そうだ。なんとかしよう。
50年前の窓とは?
次の日に家の窓を見てみた。なるほど、アルミサッシは着いているが、昔ながらの仕様だ。ガラスも単板だし、サッシも古いまま。これじゃ防音だけじゃなくて寒さなんかもひどいはずだぞ。何と言っても今の家とは50年の時代の差がある。性能差は仕方ない。
「なんか上手い方法はあるかね?」
「なんせ50年前の家ですから、簡単には行かないかも知れませんねぇ。」
「なるべく安くて早く着くヤツが欲しい。夜に寝られないのは適わない。」
……なるほど、んじゃそうだな。内側に窓を付けるか。
「このサッシの内側にもう一枚のサッシを付けます。二重窓になるのですが、施工が早くて性能もグッと上がりますよ。」
「へぇ。なんかすごそうだね」
お義母さんは少し疑問を持った模様。とりあえずメリットとデメリットを話しておこうか。
二重窓の構造
「まずは二重窓の構造についてお話しますね。
二重窓とは既存のサッシの内側に新規のサッシを設置するものです。既存のサッシと内側の新規のサッシで二重になります。
そして、窓が二重になることによって、普通の一枚のサッシとは違った特性が出るわけです。」
「なるほど。二枚が重なるから二重窓で。納得。」

【ここでのポイント】
二重窓は既存のサッシの内側に新たにサッシを付ける窓
二重窓のメリット
「次に、二重窓のメリットを挙げてみましょう。」
施工が簡単
「最初に挙げられるメリットは『施工が比較的簡単である点』です。通常の窓サッシのリフォームとなると、窓枠からの工事が必要となります。場合によっては家の構造材まで加工が必要なので、意外に厄介です。
「なるほど、交換となると大変だわね。」
「その点、二重窓であれば既存の窓にもう一枚窓を張るだけなので、工事は結構簡単に行くのです。そのため、工事で発生する人件費なんかも安くて済みます。」
「工事の費用が安くなるのは嬉しいわね。」
断熱性が向上する
「断熱性二重窓では向上します。これは、外窓と内窓の空間が熱を伝えにくくするためです。例えば、古いサッシであれば、屋外と室内を仕切るのはガラス1枚です。熱はガラスの中を伝導で伝わります。
しかし、空間があると伝導での熱移動はできません。そのため、二重窓は断熱性が向上するのです。」
「んじゃ、暖房費なんかも削られるかい?」
「おっしゃる通りです。二重窓にすることによって室内の暖房効率も良くなります。その結果として冷暖房に関するコストも抑えられるのです。」
防音性が向上する
「二重窓になると防音性も向上します。お義母さん、外がうるさい時に窓を閉めると、ある程度かも知れませんが、騒音は静かになりますよね?」
「ああ、少し静かになるね。」
「これは1枚の窓が音の伝わりを遮断しているからです。『遮音』とも言います。二重窓はこの遮音が二重になる構造。音の伝わりを2段階で減衰させるんで、静かになるんですよ。」
「なるほど、それじゃセミが鳴いても大丈夫そうだね。」
防犯性が向上する
「二重窓にすれば防犯性能も上がります。窃盗をはじめとする侵入犯が窓を破ろうとしましょう。泥棒がよく使う手口が錠の周囲を破って手を差し込んで錠を不正に開けるというものです。」
「なるほど、穴を開けて外から錠をあけるのか」
「そうなんですよ。けど、その破り方だと窓が二重になっていると難しくなるんです。そして、二回開けなければいけません。」
「なるほどね」
「ただ、防犯を考えるならば、窓の他にもガードしなければいけない点もあります。まぁ、それは時を改めて話しましょう。」
結露が抑制される
「結露が軽減される点も二重窓もメリットです。結露は屋外と屋内の寒暖差が激しい場合に屋内側に空気中の水分が出る現象です。普通のサッシであれば熱を通してしまうので、結露が出てしまいます。」
「まぁ、そうだわね。」
「しかし、二重窓の場合には違います。窓が二重になっているため、屋外の気温が屋内の気温に影響するケースが少なくて済みます。その結果として結露が発生しにくくなるわけです。」
「へぇ、なるほどねぇ。」
【ここでのポイント】
二重窓のメリット
●施工が簡単
●断熱性が向上する
●防音性が向上する
●防犯性が向上する
●結露が抑制される
二重窓のデメリット
「ところで、そんなメリットのある二重窓でも、やはりデメリットはあります。ここでは、二重窓のデメリットを紹介しましょう。」
掃除がしにくい
「二重窓は掃除がしにくい点がデメリットです。」
「サッシを拭けば終わりじゃないの?」
「確かに内窓の室内側と外窓の屋外側は簡単に拭くことができます。しかし、内窓と外窓の間の隙間は意外と難しいです。雑巾を中に入れながら拭くのは不器用な人は苦戦するかも知れませんね。
しかも、窓の内側は意外に汚れているものです。雑巾なんかで拭くとクッキリと浮かぶこともあって、なかなかにみっともなく感じるものですよ。」
「なるほど、窓の間ね」
窓の開け閉めが億劫になる
「二重窓はサッシを二枚重ねた構造です。そのため、窓を開けるためにはサッシを2枚開けなければいけません。この作業が意外に面倒です。」
「まぁ、二倍の手間が必要って言われれば、そうかもね。」
設置可能な窓が限られる
「設置可能な窓が限られるのもデメリットと言えるかも知れません。アルミサッシは引き違いが多いのですが、開き戸のようなタイプもあります。家屋の条件に合わせて使われるのですが、サッシの状況によっては付けられないケースもあります。」
「んじゃ、サッシを選ぶわねぇ。」
「そうなんです。サッシを選ぶんですよ。」
【ここでのポイント】
二重窓のデメリット
●掃除がしにくい
●窓の開閉が億劫になる
●設置可能な窓が限られる
内窓の設置を決断する
「ともかくとして、二重窓へのリフォームは簡単でありながら効果が大きい改装と言えるかと思います。
ちなみに、二重窓へのリフォームは中古マンションなどで盛んに行われているとも聞きます。マンションは窓が共有部分なのでいじれないので、その対応策として内窓を設置するらしいですね。」
「ともかく、それだけのメリットと実績があるならば、やってみる価値があるかもね。」
「そうですね。やってみると良いと思いますよ。」
後日談:二重窓を説明してからのエピソード
3ヵ月後、たまたま仕事で宮城県に出張することになった。場所は嫁さんの実家の近くだった。……そうだな、窓のことも気になるし、少し行ってみようか。
「こんばんは」
お義母さんが出て来るなり最初の言葉が
「あんた、あの窓だけど別の困ったことが起こったよ。」
「へ? 何ですか?」
「2重窓の間の部分にハエなんかが入ることがあって、もう気分が悪いったりゃありゃしない。一旦入り込んでしまったならば出て来ないし。困ってるわよ!」
……ハエか。なるほど、ここいらは自然豊かな土地だ。ハエくらい入るかもなぁ。
ともかく、その場は笑ってごまかして退散した。しかし、ハエか。盲点だった。
そして新幹線に乗って東京の自宅に帰った。
子供が指をさして言って来た。
「ドジ」……お義母さんから連絡が来ていたようだ。
確かにドジを踏んだけどさぁ。そこまで言うことないだろう。
……かくして、その晩は枕を濡らして寝落ちることとなった。
教訓:二重窓について
ここでは二重窓について取り上げた。単に窓を二重にするだけ……に見えるようで、実は多くのメリットがあることに驚いた人もいることと思う。
さて、ここで記事中で取り上げた内容をまとめてみよう。
1)二重窓の構造
●既存のサッシの内側に新たにサッシを付ける窓
2)二重窓のメリット
●施工が簡単
●断熱性が向上する
●防音性が向上する
●防犯性が向上する
●結露が抑制される
3)二重窓のデメリット
●掃除がしにくい
●窓の開閉が億劫になる
●設置可能な窓が限られる
このようなメリットとデメリットがある。窓のリフォームを検討している人が居れば、ぜひとも参考にして欲しい。
二重窓についての追加情報
物語では二重窓について取り上げましたが、そもそも、窓はどれくらいの遮音性能を持つのでしょうか。
実は、この性能には等級があり、状況によって使い分けられています。
この等級(遮音等級)はT-1~T-4等級まで。遮音性の求められる時には、それに応じて使い分けられるのです。例えば、図書館のような静かな空間が求められる時には遮音等級の高いタイプが選ばれるイメージです。
ちなみに、音はdB(デシベル)とHz(ヘルツ)で表されます。この内、dBは音の大きさ、Hzは音の高低さを現わします。音を波で表すとすれば、波の高さが大きさ、波の密度(振動数)が高さです。
参考資料
出典
一般社団法人 日本サッシ協会 「サッシの遮音性」
https://www.jsma.or.jp/useful/tabid248.html
最終閲覧日:2026年2月2日
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