【物語の背景】
主人公は東京都内在住の50代の大手建材メーカーの会社員。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。
ここで取り上げるのは外壁リフォームを考えている家内の母のエピソード。さて、どうなるか。
嫁さんのところに電話が来た様子。相手は宮城県在住のお義母さん。お義母さんの住む家のことで相談があるらしい。
「母ちゃん、そんな簡単には行くわけないよ。」
「けど、テレビじゃ簡単だって言ったっちゃ。」
「とにかく話してみるよ。」
毎度ながら嫌な予感がしたが、とりあえず嫁さんの話を聞いてみることにした。
そして、聞いてみると、嫁さんの実家がリフォームするとのこと。お義母さんはテレビで外壁のリフォームはカバー工法で安くなると聞き、こちらに電話をしたってことだ。
……イヤな予感は的中したってわけだ。カバー工法だって現地に行かないと分からない。また休日出張だよ。とほほ……。
50年前の家の外壁
お義母さんの家は築50年レベル。外壁はモルタルで痛みが目立つ。まぁ、昔の人だ。外壁塗装の必要性なんかまでは考えなかったのだろう。
さて、お義母さんが現れた。
「いつも済まないねえ。助かるっちゃよ。」
「いえいえ、とんでもありません。」……お義母さんには自宅購入の際に相当に世話になった。むげには断れない。
「ところで外壁の工事ということで聞いたんですが」
「これなんだよ」
うわぁ。こいつを何とかしたいってのか?
その壁、至るところがボロボロだ。
カバー工法だって無理だ。お義母さんを説得するほか手段は無いぞ。
劣化は化学反応と物理的変化による
まずはお義母さんを説得しようか。分かりやすいように順序を考えよう。
……こんな内容で説明しよう。
……外壁の劣化のメカニズムは複雑ですが、基本的には化学反応と物理的な変化の複合です。
具体例としては、化学的には日射や雨や温度変化などから変化が起こります。日射に含まれる紫外線が塗装の表面を破壊してしまうのです。
また、物理的な変化としては地震や風による変化、あるいは熱収縮による変化なんかもあるでしょう。地震や風は壁に振動を与えるし、熱収縮は塗装部分を割ってしまうからです。
いずれにせよ自然現象なので、止めることは不可能です。」
外壁塗装の劣化
その上で、こんな風に言ってみようか。
「……外壁塗装の劣化は間違いないでしょう。なんと言っても50年前。一般の外壁塗装でも15年レベルが限界とも思えますが、それが50年も経っています。無理もありません。
ちなみに、カビなんかが生えている部分もありますし、コケなんかまでありました。」
大きなひびの入った外壁
「更にマイナス要因。カバー工法でもマズい要因を見つけてしまいました。
それは「大きい亀裂」です。壁の中まで間違いなく影響していることだと思います。ちなみに、この亀裂がいつ頃入ったのかが分かりません。中まで影響しているんだろうなぁ。……と想像はつきます。
ちなみに、下地の壁の破損が著しいとカバー工法が難しくなってしまいます。その場合は外壁を交換ということになるでしょうが、どこまで変えるかが想像つきません。」
雨漏りの痕跡
雨漏りは天井からとしか認識されないかも知れないが、壁からの雨漏りだってある。
そして、侵入した雨水が部材を腐らせる点では同じなので、壁からの侵入だって危険なのだ。
「雨漏りもありました」自分はお義母さんに報告した。
【ここでのポイント】
劣化は化学反応と物理的変化による
カバー工法について
自分が見た感じだと、その壁はカバー工法すらも難しそうだった。
しかし、「これは古いからカバー工法はダメなんですよ」と説明するのもどうかと思う。
改めてお義母さんにカバー工法について知ってもらおう。
既存の外壁の外側から貼り付ける工法
「お義母さん、最初にカバー工法とは何かから復習しましょう。
お義母さんの認識通り、カバー工法は既存の部材なんかの上から新たな外壁材を貼るというものです。ですから、既存の部分を撤去せずに済みます。
ちなみに、既存の部材の撤去だけでも費用が膨らむわけです。」
「だからカバー工法がいいんだっちゃね。」

コストも工期も少なくて済む
「おっしゃる通りで、既存の部分の撤去が必要なために費用も時間も減らせるわけです。
人件費は人数と時間が大きく影響します。仮に、壁の撤去が4人で3日くらいとする場合と、新たな壁を2人で2日の計算で張ったとすると、やはり人件費が大きく違います。
ちなみに、撤去をするならば、撤去した外壁を捨てなければいけません。これにも資金は必要です。
そこいら辺のコストは節約が可能。カバー工法はだからすごいんです。」
【ここでのポイント】
・カバー工法は既存の外壁の外側から貼り付ける工法
・コストも工期も少なくて済む
カバー工法は万能ではない
「このように優れたカバー工法ですが、残念ながら万能ではありません。可能なところと困難な箇所があるわけです。
ここでは困難な場合を挙げてみますね。」
「え?」
下地が弱い場合
「まず挙げられるのが『下地が弱い場合』です。
カバー工法は既存の外壁部分に取付け用の部材を既存外壁に取り付け、その上から外壁材を張るという工法です。
だから、下地となる現状の外壁が弱ければ上から張ることが困難になるわけです。ちなみに、自分がこの家を見た感じだと、外壁の強度が足りないように思えます。」
「ありゃりゃ」
雨漏りがある場合
「雨漏りがある場合も困難です。
と言うのも、雨漏りのある個所に部材を取り付けたとしても、雨漏りが止まるとは限らないからです。
確かに亀裂を埋めればある程度は良いかも知れませんが、傷口を放置する感じなので、あまりおすすめはしません。」
「あら、そうなの……」
厚みが増えると納まらない場合がある
「また、外壁材には厚みがありますが、状況によっては困難な場合もあります。
例えば、屋根やドアなどは外壁材と接していますが、この部分の納まりが良くないと結果として外壁材は納まりません。
その他にも、外壁部分が出っ張り過ぎて見た目が悪くなる場合もあります。また、重量なんかも問題になることがあります。」
「なるほどねぇ……諦めた方がいいみたいね。」
後日談:サイディングの話を終えて
さてさて、今回の遠征も疲れたぞ。新幹線があるからと言っても宮城県は遠すぎる。お疲れお疲れ。
「あんたぁ。母ちゃんから電話だよ。」
「はい変わりました。 ……はい……はい……はい」
「あら、あんた、なんでそんなにガッカリしてるの?」
「いや、お義母さんが家の修繕を諦めたと思っていたんだけど、またお呼びがかかってしまった。」
「どういうこと?」
「外壁工事が難しいならば、せめて亀裂の部分の修繕だけでもやりたい。職人を頼むと高いから、自分に工事をお願いしたい。それで、『来週の休みに来てくれないか?』だってさ。
……また宮城県行きだよ。」
お義母さんにはかなわねぇなぁ。……とほほ。
教訓:サイディングのカバー工法について
ここまで外壁材のカバー工法について取り上げた。カバー工法に関する見識が増えたのではないかと思う。
さて、以下はこの記事で取り上げた項目の復習だ。
●劣化は化学反応と物理的変化による
●カバー工法は既存の外壁の外側から貼り付ける工法
●コストも工期も少なくて済む
●カバー工法は下地が弱い場合や雨漏りがある場合、そして厚みの問題で施工困難な場合もある。
住宅はリフォームをしながら利用するのがベストだと思う。しかし、いざリフォームと言っても、知識が薄いと良い家にはならない。場合によっては、悪質業者の餌食になってしまうだろう。
しかし、勉強をするならば、そのようなリスクも減るだろう。ぜひとも知識を蓄えて、良い家づくりをして欲しく思う。
サイディングのカバー工法の追加情報
カバー工法は古い住宅のリフォームでは、今やポピュラーな方法となっていると思います。物語でも取り上げましたが、既存の部分は剥がさないので、工数が減ります。人件費がそれだけ抑えられ、コストも下がる訳です。
ちなみに、このカバー工法はサイディング以外でも採用されています。例えば、屋根材にもありますし、サッシ枠などにもあります。いずれも既存部材の撤去が無いので、コストと時間が大幅に削減が可能なのです。
ところで、このカバー工法ですが、一般社団法人 日本建築材料協会の資料中でも取り上げられています。それを見ると、金属系サイディングの施工についての文章があります。少々長い文章ですが、よろしかったら、お読みください。
参考資料
出典
一般社団法人 日本建築材料協会 講演会 講演録
金属サイディング外壁重ね張りリフォームのご提案(カバー工法)
https://www.kenzai.or.jp/page/topics-association/874
(最終閲覧日:2026年1月31日)
【おすすめの記事】
本記事ではサイディングのカバー工法について取り上げましたが、こちらの記事ではサイディングの概要について取り上げています。参考にしてください。
サイディングのリフォームのための解説文!……主人公ガンバル

