スロープってどこまで必要なの?ガチで考えるやさしい玄関エントランス

スロープ バリアフリー
【書いた人】
●名前:「主人公」 年齢50代
●キャリア:大手建材メーカーに30年の間、エンジニアとして勤務。
●主に住宅建材開発及び材料・製品の試験業務を担当。
●仕事の内容は商品企画から設計、試験、クレーム対応など、商品に関するあらゆる件に対応。
●住宅建材の発明者としての特許あり。
●ブログを書く目的:30年を通して培ったノウハウを元に、「良い家づくり」を広めること。AIでは経験し得ない「生の一次情報」を元に、「分かりやすい内容」で情報提供をしたいと考えた。
●「より良い家づくりのお手伝い」がモットー。

【物語の背景】
主人公は東京都内の50代の建材メーカー勤務のサラリーマン。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。 ちなみに会社じゃパッとしない管理職。部下にも手を焼いている模様。

敬老の日のこと。家族はみんなで嫁さんの実家に帰った。築年数は50年だから、昭和のテイストを残す家だ。当然ながら、今のようなバリアフリーの考え方はない。

「最近、敷居でつまずきそうになることが多くってさ。」

「そうだろうね、段差解消の時代じゃなかったから。」

「けど、この調子で年を取ったらイヤだわねぇ。」

「ねぇ。」

……あっちの方で嫁さんとお義母さんが話している。議題は玄関まわりのバリアフリーらしい。ま、確かに不便だし危ないよね。この家ってさ。

「今度、スロープでも考えようか。」

「スロープって坂道でしょ?」

「そうだけど、結構安全で便利らしいわよ。ねぇ、あんた。」

……そうら来た。このパターンは何かを押し付けられる状態だ。逃げるか?

「スロープについて教えてあげてよ。」

……教えるだけか。それならば問題ない。 「了解です。ではスロープについて紹介しましょう。」

スロープの必要性

「もしかして議論が出尽くしてしまっているかも知れませんが、念のためにスロープの必要性について再確認してみましょう。」

車いすのため

「まず必要なのは車いすの人のためですね。言うまでもなく、車いすは階段を上れませんし、段を超えることも出来ません。そのためにスロープが必要なんです。 また、スロープは『介助者のため』とも言えるかも知れません。車いすに乗っている人の中には自走が困難な人もいます。そのような場合は介助者が押す格好になるのですが、スロープが適切に出来ていれば、介助者の労力も低減されるのです。」

「車いすには必要だわねぇ。」

転倒防止のため

「お年寄りの方にとって段差は非常に危険な部分。仮に転倒でもしようものなら、骨折に至るケースも少なくありません。スロープは階段の使用が無くなるので、転倒防止ともなるのです。
ただし、スロープにも適正な傾斜角があります。角度が急だったりすると、危険性が増すことにもなるので、傾斜角の設定は非常に重要になります。」

「キツイ角度だと確かに危ないね。」

歩行補助具のため

「最近になって、歩行補助具を使うお年寄りが増えたと思います。歩行補助具は外出の際に便利なのですが、階段などを上るためには労力が掛かります。人によっては危険を冒してまで運ぼうとします。危険です。しかし、スロープがあれば、ゆっくりと上ることが可能。安全性も高いです。」

「なるほど。安全になるわね。」

ベビーカーのため

「スロープはベビーカーなんかにも有用です。ベビーカーは重量があるため、女性には扱いが厳しいことも少なくありません。段差を乗り越えるのに大変そうにしている場面を見かけます。」

「そうだわね。」

「その点、スロープがあればスムーズに移動できます。傾斜角が適切であれば、女性でも問題ないと思われます。」

幼児のため

「幼児のためにも便利です。親は意外と気が付かないのですが、大人の階段の高さは幼児にとっては危険な高さです。そのため、階段から落ちる子供が意外といます。」

「そりゃ危ないわ。」

「しかし、スロープがあれば急な階段を上らせることもありません。安全に上がることが可能となります。」

【ここでのポイント】
スロープが必要な理由は次の通り。
●車いすのため
●転倒防止のため
●歩行補助具のため
●ベビーカーのため
●幼児のため

スロープの条件

「このように、スロープは利便性が高いのですが、利便性の確保のためには、いくつかの条件クリアが必要です。どんな条件かを解説します。」

勾配

「まずはスロープの勾配です。これは車いすの操作性にも直接関係するので重要となります。勾配が急であれば、車いすで上るのも大変だからです。」

「なるほど。」

「さて、スロープの勾配については建築基準法とバリアフリー法の2つの基準があります。建築基準法では1/8以下、バリアフリー法では1/12以下(高低差16cm以下は1/8以下)となっています。しかし、これはあくまでも最低限の数値。1/15が望ましいとする人もいる模様です。」

「スロープの幅に関しても建築基準法とバリアフリー法では基準が異なります。建築基準法では75cm以上、バリアフリー法では120cm以上です。

ちなみに、スロープは介助者の支援が必要なケースが多く、作業のスペースもあった方がベターと考えられます。そのため、バリアフリー法の120cm以上が推奨値とすべきでしょう。」

「確かに、車いすを押している人が前に行って作業する場合もあり得るもんね。」

休み場

「休み場も必要です。スロープを上る時などは車いすを漕ぐのは腕力が必要です。そのため、安全のためにも休み場がなくてはいけません。また、休み場にはもう1つの重要な意味があります。それは『減速』のためです。休み場が無いと、スロープの距離によってどんどん加速してしまいます。これでは危険です。しかし。休み場があれば、一旦加速はストップして安全なスピードにもなるわけです。」

「なるほど、減速かぁ。」

手摺り

「あと、手摺りも必要です。手すりは手を滑らせて使うので、なめらかな手触りが要求されます。また、夏場などには熱くならない素材であることが必要です。」

「確かに熱くなったら握れないものね。」

防滑

「防滑も重要です。防滑が不適切の場合、冬場などは凍り付くので危険です。特に、お年寄りにとっては、ツルツルした路面は転倒のリスクが高まるので危険でしょう。」

「そうだわね。」

転落防止

「また、スロープは転落防止の機能が欲しいですね。」

「何?転落防止って。」

「スロープの脇の手摺りって、小さい子供がくぐって落ちてしまうリスクがあるんですよ。そのような転落を防止するための部分です。具体的には縦格子となるでしょうね。」

「確かに子供が落ちるのはマズいわ。」

【ここでのポイント】
スロープの条件は次の通り。
●勾配:建築基準法では1/8以下、バリアフリー法では1/12以下。ただし、これは最低限の数値。
●幅:120cm以上が推奨値
●休み場は適宜作る
●手摺りが必要
●安全のため路面防滑を忘れない
●転落防止の機能も欲しい

後日談:スロープについて話した後でのエピソード

自分たちのスロープについての話は終わり、家に帰った。そうしたら、すぐに嫁さんの実家から電話が来た。

……やれやれ、また厄介な注文か。

「なるほど、確かにそうだわねぇ。それじゃ、一旦やめておこうかしら。」

……なにをやめるんだ?

「あんた。実家のスロープの話は一旦保留にするって。」

「なんでまた?」

「車いすに慣れるのがイヤみたい。『若いモンには負けたくない』っていう感じね。」

「そうだったか。」

「けど、なんか憤慨していたわよ。年寄り扱いされたのが頭に来たらしいわ。」

……なんか悪い展開……

「スロープは保留だけど、手摺りは付けたいみたい。その時は行ってあげてね。汚名挽回ってことで。」

……教えてあげてよって言われて教えたのに「汚名」か、イヤになるな。けど、手摺り工事か、まいったなぁ。とほほ。

おそまつ

教訓:スロープについて

ここでこれまで挙げた箇所の復習をしたいと思う。

1)スロープが必要な理由は次の通り
●車いすのため
●転倒防止のため
●歩行補助具のため
●ベビーカーのため
●幼児のため
2)スロープの条件は次の通り
●勾配:建築基準法では1/8以下、バリアフリー法では1/12以下。ただし、これは最低限の数値。
●幅:120cm以上が推奨値
●休み場は適宜作る
●手摺りが必要
●安全のため路面防滑を忘れない
●転落防止の機能も欲しい

スロープについての追加情報

スロープはお年寄りも安全確保が目的の意味もあるのですが、ベビーカーや子供の通り蜜としても考えるべきです。そのため、転落防止のための措置が欲しいです。

ちなみに、転落防止は次のような基準があります。これは一般社団法人 日本エクステリア工業会の資料によるものです。

  1. 手すりの高さは床面から110cm以上
    手すりに足がかりがある場合はそこから高さ80cm以上
  2. 手すり下部の隙間は11cm以下
  3. 格子の間隔は11cm以下

いずれにしても、お年寄りの安全だけでなく、小さな子供の安全性の確保も必要です。参考にして安全な家としてください。

参考資料

出典
●建築基準法施工例 第26条(階段に代わる傾斜路)
●バリアフリー法(移動等円滑化基準)
●一般社団法人 日本エクステリア工業会 :これからバルコニーを設置する皆様へ
https://jext.jp/7/16.html

タイトルとURLをコピーしました