【物語の背景】
主人公は東京都内の50代の建材メーカー勤務のサラリーマン。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。
ちなみに今回は奥さんが地震について尋ねて来た。主人公はどう答える?
「あんた、以前に過去の大地震について話してくれたことかあったじゃない。例えば、阪神淡路大震災とか。」
「そう言えばあったね。たまたまテレビを見てたら地震を扱ったニュースか何かを見た時だったな。」
「あれで気になってたんだけど、住宅ってどうやって地震に耐えてるのかな?とか。」
「今さらどうしたんだい?」
「実家のこともあるからさ。
・・・なるほどな。築50年くらいだもんな。気になるのも無理ないだろ。
「んじゃ、今日は住宅の構造と地震について話そうか。」
「頼むわ。」
住宅の構造の種類と耐震性
「住宅は外観こそ似てはいるが、中身を見てみると結構違う。柱と梁の組み合わせやら、素材やらで違うんだよな。」
「あら、そうなの?柱と梁があれば作れるのかと思ってたわ。」
「いや、そうでもないんだ。後で話すけど、素材にも特徴があるんだよ。だから、区別して考えた方がベターなんだよな。」
「そうなのね。」
「さて、住宅の構造の話に戻すぞ。住宅は基本的には次の3つに分類される。
●木造
●鉄骨造
●鉄筋コンクリート造
ちなみに、構造には木造でツーバイフォーとかもあるが、便宜上、ここでは三種類としておくぞ。」
「うん。分かったわ。」
木造住宅の耐震性
「まずは木造だ。ここでは在来工法について話すぞ。まぁ、木造にはツーバイフォーなんかの工法もあるが、件数で言えば在来工法だろうからな。」
「よく分かんないけど、それでお願い。」
木造住宅の構造の特徴
「まずは構造の特徴から。これは基本的には柱と梁の組み合わせとも言えるんだけど、実はそれだけじゃ無い。重要な部材として筋交いがある。」
「筋交いね。あの斜めに付けてある部材でしょ?」
「その通り。あの斜めの部材、実はものすごく大切な部材。なんでか分かるか?」
「分かるわけないわよ。」
「実はあの部材、横からの力に耐える部材なんだよ。」
「え?横から?」
「そう。横からだ。横からの力に耐えることは強度を考えたときには非常に重要だ。地震には横揺れがあるからな。」
「けど、意外と簡単なのね。」
「まぁ、出来上がった状態を見ればその通りだけど、結構、その中にも工夫がある。細かい部分にはなるが、部材と部材を接合している部分、あれは強度の高い金属部品を使っている。構造強度のアップのためだ。」
「なるほど、釘で止めるよりも頑丈そうだもんね。」
「ま、そういうことだ。あと、筋交いじゃなくてパネル材を打ち付けることもある。これも特徴があって、筋交いならば一点に力が集中するが、パネルだと全体に分散しやすい。だから強い。」
「確かに工夫があるわね。」
材質の特徴
「今の木造住宅の多くは集成材や合板なんかを組み合わせて作る。」
「集成材や合板って接着剤で貼ってる素材でしょ?ホントに大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫さ。ホームセンターなんかで売ってる接着剤とはレベルが違う。強度はすごく高い。」
「そうなの?」
「だって、今まで接着剤が剥がれてバラバラになった家があるって聞いたことあるか?」
「さすがに無い。」
「だろ?それよりも、これらの材料は優れた特性を持っている。」
「それは何?」
「寸法安定性だよ。」
「寸法ね。けど、寸法ってそこまで重要なの?」
「だって、仮に6メートルの部材が0.1パーセント伸び縮みしたらどうなる?」
「変わるのは何センチかでしょ?多くても。」
「けど、その何センチかがすごく重要。その変化によって家屋に歪みが発生するからね。」
「歪み???」
「そう、歪み。例えば、曲がったり、ねじれたりとかね。」
「怖いわね」
「だから、寸法精度の高い集成材や合板を使うのさ。」
「なるほどね。」
「ちなみに、素材の特性も重要だ。」
「素材の特性?」
「そうだよ。素材の特性。木は硬さもあるだろうが『しなる』のも特徴だな。あの『しなり』で揺れを吸収するイメージだろうな。」
「なるほどねぇ。」
鉄骨造の住宅の耐震性
「木造で聞き飽きたかもだけど、もう少しガマンしてくれ。次は鉄骨造だ。」
鉄骨造の構造の特徴
「次に鉄骨造だ。これは基本的には柱と梁で強度を保たせる。」
「木造とは違いそうね。」
「そうなんだ。鉄骨造の特徴は部材と部材の接合点の強度が非常に高い。そして、鉄は硬さもあるが『粘る』性質もある。」
「粘るのね」
「そうだ。機械体操の鉄棒なんかは粘りながら選手の身体を支えてる感じだろ。あれが粘らなかったら、折れているかも知れないぞ。」
「そうなのね。」
「そして、鉄骨造はその粘りを利用していると言える。横からの力に対しては粘りながらショックを吸収している感じだろうな。」
「難しいわね。」
「そうだな。難しいかもな。ちなみにこいつは『ラーメン構造』って言うぞ。」
「変な名前ね。」
材質の特徴
「素材を考える上では、鉄の性質を知ることも必要だろう。」
「また難しいの?」
「まぁ、そう言うなよ。鉄は硬さと強さで何種類もある。例えば、包丁みたいなのから、工芸品の鉄瓶みたいなの。同じ鉄とは思えないくらいの違いだろ。」
「確かにそうだわね。」
「それと同じで、構造用にも鉄は用意されている。それもJISで強度なんかも決まっている。」
「なるほど、だから安心して使えるのね。」
「その通りだな。」
鉄筋コンクリート造の耐震性
「そして、鉄筋コンクリート造だな。マンションなんかが多いだろうけど、小規模のものも案外ある。」
構造の特徴
「鉄筋コンクリート造は知っての通り、コンクリートに鉄筋を仕込んで作る構造だ。コンクリートと鉄筋の長所を上手く補い合って支えている。」
「それはどういうこと?」
「引っ張る力と圧縮する力だよ。鉄筋は引っ張る力に対して強くて、コンクリートは圧縮する力に強いのさ。だから組み合わせると、強度の高い構造が出来る。」
「なるほどね。」
「そして、もうひとつ大事な点かある。」
「なんなの?」
「コンクリートは燃えない。つまり、火に強いんだ。」
「あー、なるほど。」
材質の特徴
「材質も特徴的だ。鉄筋コンクリートはとにかく長寿命だな。だって、中の鉄筋は腐食しないから。」
「鉄はさびるでしょ?」
「いや、コンクリートは強いアルカリなんだ。そして、強いアルカリの中では鉄筋はさびない。」
「へえ」
「だって、新宿あたりのオフィスビルを見ろよ。築50年クラスでも平気で使ってるぞ。」
「実家も50年だけど、貫禄が違うわね。」
「まぁ、もう少し言うならば、コンクリートのアルカリは空気中の二酸化炭素と反応して中性に変わって行く。中性に変わってしまうと鉄筋の腐食は始まる。その場合、鉄筋が腐食すると体積が増えるので、周囲のコンクリートを破壊してしまう……という現象もあるけど。かなりゆっくり進むらしい。あくまでも自分の聞く範囲だが、大きな被害はあまり無いと思う。」
「鉄筋コンクリートも『絶対』じゃないってわけね。」
建物の重量と耐震性
「ところで耐震性に話を戻そう。今挙げた構造は地震に耐えられるように作られている。けど、地震に有利な点と不利な点はある。『重量』がポイントだ。」
「重量???」
「そう。重量。一般には重い方が不利だ。だって、ダンベルなんかだと、軽いヤツは持ちやすいけど、重いヤツは難しいだろ。」
「確かに」
「まぁ、それは乱暴な論理とも思うが、ともかく重い方が不利だ。そこで知っておいた方がいい点がある。特に、古い日本家屋だな。」
「なんなの?」
「瓦屋根だよ。あれ、かなり重いんだ。」
「なるほど、そうなると耐震性に難アリになるわね。」
「そうなんだよ。だから、実家の屋根が気になってさ。」
「いよいよリフォームかな?」
「うん。考えなきゃな。」
後日談:耐震性について話した後でのエピソード
「あんた、この間の実家の件、覚えてる?」
……なんか嫌な予感がした。こういう時は何かを押し付けられることが多い。
「あの後、実家に電話したら、何かビックリするほど怖がっちゃって。」
……まぁ、そうだろうな。自宅の瓦屋根がヤバいと知ったら怖いに決まってるだろ。
「そこでだけど、実家に行って瓦屋根を見て欲しいのよ。あんたなら屋根くらい分かるでしょ?」
……ほーら来た。毎度の無料出張サービスだ。
「ともかく、実家の方には行くって伝えちゃったから。次の休みに行って来てね。」
……毎度の通り、タダ出張が来てしまった。情けないやら悲しいやら……グスン。
耐震性についての追加情報
住宅の耐震性安全な生活を送る上で非常に大切です。そのため、家を購入、あるいはリフォームをする時などは、しっかりとした知識があるべきです。
ところで、この記事では耐震性について構造別に取り上げました。構造別に意外と違うことに気が付いた人も多いのではないでしょうか。……リフォームの場合は自宅の構造を覚えておいた方がベターでしょう。
ちなみに、耐震性についての構造を知らずに「耐震補強をしてくれ」とだけ業者に言うと、どのような工事をしてくれるか分からないこととも思います。しかし、それでは良くないので、あらかじめ勉強しておく方が良いでしょう。
参考資料
出典
一般財団法人 日本耐震診断協会 建物の構造と耐震性の関係は?
https://www.taishin-jsda.jp/column20.html
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物語の途中に「実家」とありましたが、そちらに関しても記事化をしています。テーマは耐震性ですが、テイストが違うので参考になるかと思います。よろしかったらご覧ください。
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