【物語の背景】
主人公は東京都内在住の50代の大手建材メーカーの会社員。家族は妻と子供2人。20年前に一戸建て住宅を購入。悩みは老朽化する家と小遣いの少なさ。子供は反抗期真っ最中。
さて、今回は隣の家がリフォームしたとのこと。高級なフロア材を使ったとのことだが、それが本当に良かったかどうかを講釈するってことで。
「あんた、隣の家がリビングをリフォームしたみたい。近所で結構評判になってるわ。なんでも床材を凝ったみたい。」
「へぇ、んじゃ無垢フローリングでも使ったのかな?」
「ともかく高級品みたいだわ。いいなぁ。」
「けど、住宅建材なんてメリットもあるけどデメリットもあるもんだぜ。」
「高級なフロア材もなの?」
「そうさ。一般に高級とされている無垢材だってマイナスの面があるもんさ。」
「そうなのね。例えばどんなの?」
「例えば、そうだな⋯⋯寸法安定性なんかが目立つだろうな。」
「何それ?」
「まぁ、聞きなさい。」
膨らむ木・縮む木
「まずは覚えておきたいのが、無垢フローリングは天然木を切り出して作ったフローリング材だ。木の感触があったり、香りがするなど、人気は非常に高い。」
「そうだわね。憧れるわ。」
「けど、木の性質を思い出して欲しい。木は湿度なんかで伸び縮みするのは知ってるだろ?」
「まぁ、常識だよね。そんなの。」
「んじゃ、そこをもう少し突っ込んでみよう。確かに伸び縮みする。けど、そこを釘なんかで打っていたり、別なフロア材と組み合わせていたらどうなる?」
「なんか全体が膨らんだり、ねじれたりしそうね。」
「そうなんだよ。寸法が意外と不安定なんだ。湿度が高い梅雨時なんかと空気が乾燥する冬場なんかは環境が完全に違う。だから伸び縮みもする。だから、ゆがむ。」
「それじゃ、床がベコベコにもなり得るの?」
「それは極端な話だけど、理論的にはあり得る話さ。」
「なるほど、いい話ばかりじゃないのね。」
合板から作ったフローリングってどうなの?
「その一方のフローリング材が『複合フローリング』ってヤツ。こちらは合板の表面に天然木を薄くスライスしたものを貼ったヤツ。話を聞くだけでも安っぽいように聞こえるシロモノだ。」
「たしかにね。合板って安っぽい印象があるわ。」
「んじゃ、合板ってどんなものか知ってる?」
「今言ったようなスライスした板を接着剤で貼り合わせたものでしょ?」
「まぁ、概ねそんなもんだ。けど、そこに結構なメリットが隠れている。」
「何?メリットって?」
「寸法安定性が良いんだ。」
「と言うと、さっき言った床がベコベコって話は無くなるわけ?」
「完全に無いとは言い切れないが、可能性はグンと少なくなる。だって、今の家で床がベコベコってことは無いだろ?」
「確かに」
寸法安定性の重要性
「もう少し寸法の話を教えてよ。」
「そうだな。寸法が不安定ってこと、今は床がベコベコって話をしたが、逆に湿度が低くなるとどうなると思う?」
「そうねぇ、縮むのかしら。」
「その通り。縮むんだ。しかも、結構な比率でね。大体だけど、0.1〜0.4%とも言われる。」
「大したこと無いんじゃないの?それくらいならば。」
「そうだな。けど、1メートルにつき1〜4mmだ。けど、畳1のサイズを90cm×180cmとすると、8畳間は1辺が3.6メートルになる。そうすると1.5センチくらいの伸縮となる。」
「計算上はそうなるわね。」
「そうなると、仮に湿度が低いくて木が縮んだらどうなる?」
「ミリ単位だけど、結構な隙間ができるかもね。」
「んじゃ、そこの隙間にゴミが入ったり、汚れが付着しちゃったらどうなる?」
「⋯⋯結構目立つかも知れない。」
「500円玉を隙間に落としたらどうする?床下を貯金箱にするかい?」
「絶対にヤダ」
「他にも割れが走ったりすることもあるよ。それも目立つ。」
「ますますヤダ。」
「そうなんだよ。寸法安定性が出ていないってことは、それくらいのリスクを抱えるんだ。」
「⋯⋯⋯」

無垢フローリングと複合フローリング
「それじゃ、無垢フローリングはダメってこと?」
「いや、そんなことはないさ。木の肌触りは格別だし、香りもあるだろ。しかも、経年劣化でなんとも言えない味わいも出てくる。年を経た木材なんか渋さあるだろ?」
「そうだわね。」
「複合フローリングはそういうことはない。表面が劣化すると、やはり雰囲気はお粗末だ。」
「それじゃ、どっちが良いのかしら?」
「結局のところ、個々人でどちらを選ぶかってことに尽きるんだよな。あとは財布事情なんかもね。ただ、残念なことが1つある。」
「どういうこと?」
「財布の事情だよ。ウチは逆立ちしたって無垢フローリングは敷けないだろ。」
「それは給料が⋯⋯だからねぇ。」
⋯⋯しまった。藪蛇だった。
おそまつ
複合フローリングに関する追加情報
ここで、この記事についての考え方を挙げてみたいと思います。
● 無垢フローロングについて取り上げましたが、無垢の木材は天然素材のため、工業製品のようには勝手が行きません。例えば、金属製品であれば、図面上の許容差に0.5mm範囲を決めることは可能ですが、天然素材はそのようには行かないのです。
特に、前にも述べた天然木材の場合、季節によっては1mにつき4mmも伸びることがあるとか。自分はアルミ建材に携わったことがありますが、大体の部材は1mm以下の許容差。天然木素材のようには行きません。……と言うことであれば、天然素材…‥しかも木材であれば、なおさら目をつぶらなければいけないかも知れません。
ちなみに、無垢フローリングと複合フローリングの違いはこんなにあります。
| 天然木の無垢フローリング | 複合フローリング |
| 天然木ならではの触感と味わい、そして調湿機能。しかも、長く使えば独特の風合いが出る。しかし、寸法安定性に難があり、隙間や反り、そして、場合によっては割れも生じる。 | 反りや収縮が少なく、寸法安定性も良い。その反面、傷が付いてしまうと下の合板の部分が見えてしまう。天然木のような調湿機能はない、などの欠点を持つ。 |
● 住宅建材は様々な素材から出来ていますが、大別すると「天然素材」と「人工素材」から出来ているとも言えます。例えば、手すりなんかを見ると、天然木のものがある一方で、アルミなんかの金属製のものもあります。これらはどうしても一長一短になってしまいます。
例えば、天然木の手すりは触感に優れますが、ささくれのリスクも無いわけではありません。また、アルミの場合はささくれのリスクはありませんが、夏場は熱くなってしまいます
このように、建材の選択は「一長一短をどのように見るか」によって違うと言えるかも知れません。
では、家づくりを考えている人はどうするべきでしょうか。
⋯⋯おすすめしたいのは「情報収集」が最重要ではないか⋯⋯と自分は思います。
知っていればデメリットも納得できたかも知れませんが、想定外のデメリットが出たならば、憤慨もひとしおになると思うからです。
いずれにせよ、家づくりは情報収集が重要です。納得できる家をつくるためにも、積極的に勉強をしてください。
【おすすめの記事】
●ここではフローリング材の寸法安定性の角度から見ましたが、次に挙げる記事ではフローリング材の概要を取り上げています。全体像を見るために有益と思いますので、ぜひともご覧ください。
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●こちらの記事では床防音について取り上げています。床の理解が深まるので、併せてご覧ください。
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